ホンダが走行中にEVへ給電する道路技術を発表 館山道の実証で確かめること

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充電のために車を止めるのではなく、走っている間に道路から電力を受け取る。電気自動車の使い方を変えそうな技術ですが、道路に設備を埋めれば、その日からすべてのEVが充電できるわけではありません。車両側にも対応する装置が必要です。

ホンダは2026年10月上旬、大成建設、大成ロテックとの共同研究で、EVの走行中給電に向けた基盤技術を開発したと発表しました。大型商用車も視野に入れ、2027年度以降の公道での実証を目指しています。便利な未来の話と、これから検証する課題を分けて見ていきます。

道路から電気トラックへ給電する構想のイラスト
AI生成のイメージ(実際の施設・商品を再現したものではありません)

道路から車へ、ケーブルをつながず電力を送る

走行中の無線給電は、道路に埋めた送電用のコイルと、車両に備えた受電用の装置の間で、接触せずに電力を送る仕組みです。停車して充電器のケーブルを差し込む方法とは、電力を受け取る場所と時間が違います。

今回の共同研究では、地上の直流電源、道路に埋める送電装置、車両側の受電装置を組み合わせています。ホンダが車両と送電・受電の技術、大成建設が電源、大成ロテックが道路への施工方法を担う構成です。車の技術だけでも、道路工事の技術だけでも成り立ちません。

電力を送る側と受け取る側がそろって初めて、給電が可能になります。NEXCO東日本の実証の説明でも、対応車両が通過するときに送電し、通常の非対応車両には送電しないとされています。EVならどれでも使える設備ではないことが、最初に押さえたい点です。

物流で期待されるのは、充電のために止まる回数を減らすこと

ホンダはまず物流・輸送分野での実用化を目指す考えを示しています。長い距離を走る車両では、移動と充電の時間をどう組み合わせるかが、運行を考える材料になります。道路から補給できれば、充電のための停車頻度を減らす可能性があります。

例えば、決まった経路を繰り返す輸送なら、どの区間でどれだけ電力を受け取れるかを運行計画と合わせて検討できます。ただし、これは仕組みから考えられる利用場面です。今回の発表が、すでに特定の物流事業で費用や時間を削減した実績を示しているわけではありません。

大きな電池を積むことと、走りながら電力を補うことは、同じ問題への異なる取り組みです。道路で補給できれば必要な電池容量を減らせる可能性もありますが、実際にどれだけ減らせるかは、走行経路や給電区間、車両の消費電力などによって変わります。

電池が小さくなれば必ず車両や輸送が安くなる、とも言い切れません。車両の受電装置や道路の設備を含めた費用が関係するからです。利点を考えるときは、車両単体ではなく、運行と設備を合わせて見る必要があります。

重い車が繰り返し通る道路で、装置を守れるか

送電できることを確かめるだけでは、道路として使えることの確認は終わりません。大型商用車が繰り返し通過しても、埋めた装置と舗装が耐えられる必要があります。道路の表面は車を走らせる場所であり、設備を保護する部分でもあります。

三社の研究は、送電装置を含む舗装の強度や耐久性、埋設の方法、更新のしやすさを扱っています。設備が故障したときの保守や、舗装を直す際の扱いまで考えなければ、長く使う道路には組み込みにくいからです。

ここに、止まった場所で使う充電器との違いがあります。道路上の設備は、給電に対応しない車も含めた交通の荷重を受けます。電気設備としての性能と、道路としての安全性・耐久性を同時に確かめる必要があります。

150kWは、これから性能を確かめる水準

ホンダの発表は、今後、大型商用車への適用を想定した最大150kWの高出力領域での性能確認や、高速走行時の信頼性の検証を進めるとしています。これを、すでに公道で常時150kWを供給している実績と読むのは正確ではありません。

また、kWは電力の大きさを表す単位で、蓄えた電気の量を表すkWhとは違います。同じ出力でも、給電を受ける時間が短ければ受け取るエネルギーは少なくなります。出力の数字だけで、車が何キロメートル走れるかを計算することはできません。

走行中の車は、給電設備の上を通る時間が限られます。給電区間の長さ、速度、受電条件が関係するため、「高出力なら一瞬で満充電」といった説明も避けたいところです。実証では、実際の走行環境でどのような性能になるかが重要になります。

館山道の実証は2027年度以降の予定

NEXCO東日本は、館山自動車道の本線で走行中給電の実証を進める「館山プロジェクト」を案内しています。場所は君津パーキングエリア付近で、実験は2027年度以降の予定です。ホンダなどもこのプロジェクトに参加する方針を示しています。

2027年度は2027年4月から始まる年度で、2027年の年明けからすぐ一般向けサービスが始まるという意味ではありません。さらに、実証実験と商用サービスも違います。参加車両や実験条件を設定して技術を確かめる段階を、一般の利用開始と混同しないことが大切です。

現段階の発表は、すべての利用者が使える充電道路の開通案内ではありません。ドライブの際の充電計画は、いま利用できる充電設備の情報を基準に立ててください。

使う人、道路を管理する人で論点が変わる

輸送を担う側から見ると、停車時間や必要な電池容量を減らせるかが関心になります。道路管理者から見ると、施工にかかる手間、交通を妨げずに維持する方法、舗装と設備の寿命が重要です。電力を供給する側には、需要の変化へ安定して対応する課題があります。

便利さだけを見て導入を判断することも、施工が必要だから難しいと決めつけることも、どちらも早い段階です。まず実交通に近い環境で性能を確かめ、その結果を費用や運行条件と照らす必要があります。研究には異なる企業が参加し、それぞれの技術を組み合わせています。

給電効率や電磁界への対策も、今後の検証の対象です。電力を送った量と車両側で利用できた量、周囲への影響をどう評価するかによって、実用性の見え方は変わります。今回の発表だけで、すべての条件で安全性や効率が確定したと理解する必要はありません。

道路も車も変える技術として、結果を待つ

注目したいのは、実験に成功したという一言より、どの速度・荷重・路面条件で、どれだけ安定して給電できたかです。設備の更新方法や保守の結果も分かれば、実際の道路で長く使うための見通しが立ちます。

走行中給電は、充電器を増やす方法と競い合うだけの話ではありません。自宅、拠点、休憩地点での充電と組み合わせ、用途に応じた補給方法の一つになる可能性があります。その役割を判断する材料が、これからの実証で積み重なっていきます。

今回のニュースは、「充電で止まらなくてよい未来」が確定したという話ではなく、その実現に必要な車両・電源・道路の技術をまとめ、次の試験へ進む発表です。将来の便利さを想像しながら、実証と一般利用の間にある段階も知っておくと、技術の進歩を具体的に追えるようになります。